歯周病菌がウイルス感染に影響?歯科医が教えるウイルスと歯周病の関係
ウイルスと歯周病は関係ある?
これからの季節、流行する恐れがある「インフルエンザ」。今年の冬は感染症対策の緩和などで、とくに流行するのではないかとメディアで取り沙汰されています。
そこで今回は、インフルエンザで明らかになっているデータをもとに、ウイルスと歯周病の意外な関係をお伝えします。
※新型コロナウイルスに特化した内容ではありませんので、あらかじめご了承ください。
1.歯周病菌とインフルエンザウイルスの意外な関係
ウイルスは、口や鼻から侵入するのが一般的です。しかし唾液や鼻水で洗い出されるので、必ずしも発症するとは限りません。
ただ歯周病菌には、喉の粘膜を保護するタンパク質を破壊することがわかっています。また糖尿病も、身体の免疫力を落とす原因となるでしょう。ウイルスが侵入・繁殖しやすい環境となり、感染症にかかるリスクがグッと上昇します。
健康な人はインフルエンザよりも、歯周病にかかりやすいというデータが実際に存在しています。
このように、両者には意外と深い関係があるのです。
歯周病菌から放出される酵素(プロテアーゼ)や毒素が「上気道粘膜」と呼ばれる喉の粘膜を守るタンパク質を壊すことが明らかになっています。
するとそこからウイルスが侵入し、細胞にくっついて体内へと入り込むのです。これが「感染」です。酵素や毒素が気道の粘膜も攻撃すると、炎症を起こして感染が広がるため注意が必要です。
2.歯周病を防ぐために
2−1.口腔ケアアイテムの併用
日々のブラッシングは非常に大切なことですが、歯ブラシだけでは6割程度の汚れしか落とせないことをご存知でしょうか。
そこで役に立つのが、その他の口腔ケアアイテムです。歯間ブラシやデンタルフロスを併用し、歯間などの汚れを確実に落としてください。毎回使用する必要はなく、1日1回程度でOKです。
2−2.歯科医院で定期健診を受けること
自宅でどれだけ丁寧にブラッシングしていても、磨き方のクセや歯列咬合の問題があると、どうしても磨き残しが生じがちです。最近は目に見えない部分で繁殖するので、気付けば歯周病になっていたという話も決して珍しくありません。
数ヶ月に1回は歯科健診を受け、歯科衛生士によるクリーニングで清潔な口腔状態をキープしましょう。適切なブラッシング方法も、適宜指導してもらえるはずです。
口腔ケアがウイルス感染の予防につながる!
口腔内を清潔に保つことで、具体的にどのような効果が見込めるのでしょうか。実際のデータをもとに、詳しくお話しします。
【データ1】
東京杉並区のある小学校2校を対象に、洗面台を増やして「歯みがき習慣を身につけるための推進活動」を実施しました。その結果、取り組みを行なっていない41校に比べて学級閉鎖のクラス数が半減したのです。
【データ2】
ある介護施設で、歯科衛生士が高齢者の口腔ケアを週に1回実施しました。すると半年後、取り組みを行なっていない施設に比べてインフルエンザの発症率が約10分の1という結果が得られました。
3.あなたは鼻呼吸できていますか?
ここからは、鼻呼吸を行なうメリットをいくつか紹介します。
口呼吸をしている自覚がある人は、これを機に意識しながらクセを修正しましょう。
3-1.フィルター作用がある
空気中のホコリやウイルス、花粉などを、鼻毛が絡め取ってくれます。鼻の粘膜から出る分泌液が、それらを排出してくれるでしょう。
3-2.加湿・加温作用
万が一ウイルスが鼻の中に滞在していても、空気が通ったときの加湿・加温作用で生存率が低下します。
口呼吸にはこの作用がなく、喉からウイルスが入ってしまいます。日頃から鼻呼吸を意識し、ウイルスが少ない状態で肺へ送り込みましょう。
「どうしても口呼吸になっちゃう…」
という方には、次に紹介する「あいうべ体操」にチャレンジしてみてください!
「あいうべ体操」に期待できる効果と方法
呼吸方法の改善に役立つ体操で、継続して行なうことが大切です。
最初の数日間は顔に筋肉痛や疲労が生じますが、慣れればスムーズにできるようになります。
初めは回数を減らすなどして、無理のない範囲で行なってください。
【手順(1日30セット)】
1.口を大きく開いて「あー」と発声する
2.口を大きく横に広げ「いー」と発声する
3.口を前にグッと突き出し「うー」と発声する
4.舌を下に伸ばして「べー」と発声する
ゆっくりで構いませんので、正確に口を動かすことを意識しながら行ないましょう。
4.まとめ
歯周病菌は歯を蝕むだけでなく、喉の粘膜を守るタンパク質を壊すという力を持った恐ろしい病気です。
これからの季節、風邪やインフルエンザに感染しないためにも、日頃からの丁寧な口腔ケアを徹底してください。歯ブラシだけで済ませるのではなく、ほかの口腔ケアアイテムも併用することが大切です。そして定期的に歯科健診を受け、健康な口腔状態をキープしましょう。
歯周病だけでなく、むし歯を始めとしたほかの口腔トラブルの早期発見・治療にもつながります。まずはかかりつけ医に連絡し、一度口の中を診てもらってはいかがでしょうか。
感染症が流行のピークを迎える前に、何らかの行動を取ってもらえれば幸いです。